30歳ぐらいの男性から、「結婚式って、本当にやるべきなんですか?」という相談を受けることがよくあります。中には「彼女はやりたいって言うんですが、自分は乗り気じゃなくて…お金ないし」「お金は違うものに使ったほうがいいと思ってしまう」といった声も。
確かに、結婚式は多くの費用がかかるイベントです。準備に手間も時間もかかり、当人たちにとっては「なくてもよい」と思う気持ちも理解できます。
ですが、ファイナンシャルプランナーとして、そして親世代・親戚づきあいの現実を見てきた立場として、あえてお伝えしたいのは、
「結婚式・披露宴は、小規模でも“やったほうがいい”イベントである」
ということです。その理由を、金銭・人間関係・将来のリスク管理の観点から、論理的に解説します。
「やらなかった結果、挨拶まわりで休日がつぶれる」リアル
結婚式をしない場合、「親戚には後日個別に挨拶に行けばいい」と考える方も少なくありません。
ですが現実には、この“後日対応”が非常に非効率であるケースが多いのです。親戚ひとりひとりに訪問し、お祝いをいただき、お返しの準備をする。住所も電話番号もすぐにわからず、アポ取りからして一苦労。休日がどんどん消えていきます。
一方で、披露宴という場で一度に親戚を呼べば、挨拶・報告・お祝いの受け渡しが「公式な場」でスムーズに完結します。
金銭面の“見えないトラブル”を防ぐ意味でも重要
親戚からのお祝い(ご祝儀)には、地域や家によって「額の相場」「お返しの仕方」「タイミング」などに“しきたり”があります。
式をしなかった場合、こうしたしきたりが崩れやすくなり、「あの家にはお返しした?」「うちはもらってない」など、金銭的なトラブルの火種になりやすいのです。
最悪の場合、親世代から「あそこの家に恥をかかせた」と言われたり、親戚づきあいにしこりが残ることもあります。お金の話は後を引きやすい──これは、親戚づきあいにはよくあることです。
「いまの親戚づきあい」は、まだ“親世代のルール”が主流
あなたが「形式にこだわらなくていい」と思っていても、結婚とはあなたとパートナー、そしてそれぞれの家族・親戚を巻き込んだ“社会的イベント”です。
とくに親戚関係については、いまだに親世代が主導権を持っている家庭が多い。ルールを変えるなら、自分たちが親になってからでよい。いまは現行ルールに則る方が、長期的に見て“ストレスコスト”が小さくて済みます。
なお、女性、男性とも天涯孤独であったり、親に兄弟(おじおば)、その子ども(いとこ)がいなければ、親戚づきあいはありませんので、それほどきにかけることはないでしょう。また、親戚づきあいは他人(結婚相手)にはわからない領域であるので、「うちの場合は・・・」というと、怒りと買うことになうので、極力口をださないことをおすすめします(限度はありますが)
彼女やその親が「式を望む」なら、ある程度任せるべき理由
もうひとつ、ファイナンシャルプランナーとしてだけでなく人生相談的な側面でお伝えしたいのが、「彼女やその親が結婚式を望む場合は、ある程度任せるのが賢明」だという点です。
結婚式は、“あとから蒸し返されやすい話題”です。
「私、あのとき本当はやりたかったんだよね」「うちの親、式がなかったことまだ言ってるよ」──こういった言葉が、数年後にふと投げかけられたとき、あなたの感情も関係性も揺さぶられることになります。
感情的な不満は、お金では解決しにくい。その点でも、「式を通じて感情の納得を得ておく」ことは、精神的にも将来的にも“コストパフォーマンスのよい投資”になるのです。
最適解は「親戚中心の披露宴」
派手な結婚式をする必要はありません。むしろ、ファイナンシャルプランナーとしての視点からは、最小限のコストで最大の効果が出る「親戚と小人数の友人の披露宴」をおすすめしています。
・ご祝儀の受け渡しが自然にできる
・両家の親のメンツが立つ
・式という“社会的区切り”を周囲に共有できる
このように、結婚式・披露宴は“リスクヘッジ”の意味を持つセレモニーです。やらない理由を考えるより、どうしたら“最小の負担で最大の安定”を得られるか──その視点で判断するのが、現代の賢い選択ではないでしょうか。
結婚式は「お金と心のリスク管理」
結婚式は、お金と時間がかかる“非効率な行事”に見えます。
しかしそれは短期的な視点にすぎません。長期的には、人間関係・親族対応・金銭トラブル・感情のこじれなど、さまざまな将来の“面倒”を防ぐ効果的な保険になるのです。
あなたが合理的な選択をしたい人ならこそ、今一度、結婚式というイベントを“戦略的にどう活かすか”を考えてみてください。