病気やケガは、ある日突然、やってくるものです。健康でいるときには見えづらい“もしも”のコスト――その代表例が医療費です。
「健康保険があるから十分では?」と考える方も少なくありません。たしかに、日本の医療制度は世界的に見ても非常に手厚く、自己負担は3割(高額療養費制度もあり)で済みます。
しかし、実際に入院してみると“健康保険でカバーされない部分”の負担が意外と大きいことに気づかされます。
差額ベッド代――1日1万円超も珍しくない現実
例えば、差額ベット代です。私自身の体験談ですが、ある新しいきれいな大病院で手術をすることにした際、差額ベット代のある部屋しかありませんでした。正確には、緊急入院(救急車で運ばれた)や諸事情のある方むけの部屋はあることはありましたが、そこを選択すると、転院を勧められる雰囲気でした。結局、一番リーズナブルな四人部屋を選択したのですが、それでも1日一万円以上の差額ベット代がかかりました。
一般的に「差額ベッド=個室」と思われがちですが、実はそうではありません。
さらに、新築やリニューアル直後の病院では、差額ベッド代が高めに設定されていることも多く、1日あたり5,000円〜15,000円というのが相場。長期入院になれば、その差額だけで数十万円にもなりかねません。(厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第591回)差額ベットについて)
ただ、差額ベッド代の中には入院着やタオル(使い放題)、日用品(シャンプーや石鹸)の利用料などもセットで含まれていることがあり、手ぶらで入院できますので、そうした利便性や快適さに価値を感じる人にとっては良いサービスと言えると思います。
保険に頼らない備えもあるが、性格に左右される
では、「医療保険には絶対に入るべきか?」というと、答えは一概ではありません。たとえば、手元に十分な貯金があり、投資などの運用資産もある方であれば、医療保険を使わずともカバーできる場合もあります。実際、長期的視点からみれば、保険はもうかるという時代はなくなり、投資のほうがお金は増えるでしょう。
しかしここでひとつ、重要な視点があります。
それは、「自分は“必要なときに”定期預金や投資信託を迷いなく取り崩せる性格か?」**ということです。
人によっては、株価が下がっているときに資産を売ることをためらってしまい、結果として医療費の支払いに苦労することもあります。
その点、医療保険は“自動で備える仕組みと言えます。ある種の強制貯金のように考えると、心理的にも安心できるという方も多いのではないでしょうか。
「お金に余裕があるうちに」入っておくのがベターな理由
例外の除き、保険は健康でいるうちにしか加入できません。一度でも大きな病気をすると、加入を断られたり、条件がついたりするケースがあります。
したがって、「保険に入るかどうか」は、“今の自分が健康かどうか”と“経済的に余裕があるかどうか”で判断するのが合理的です。なお、保険で“もと”をとれることはほとんどないでしょう。金銭面では特にはなりませんが、精神面では気が楽です。
もちろん、「保険に頼らず自分で準備する」というのも立派な選択肢です。ただしそれは、いざというときに迷いなく資産を活用できる“自立型”の性格であることが前提だと私は考えています。
結論:「保険=ムダ」と決めつける前に、“自分の性格”を見直してみよう
医療保険は、あくまでも選択肢のひとつ。どちらが正しいというよりも、自分のライフスタイルと性格に合った方法を選ぶことが何より大切です。
私自身は、「お金に余裕があれば、医療保険には加入しておく」ことをおすすめしています。
私は、アラフォーのころに、終身の医療保険を一括して支払いました。実際に手術して10日間ほど入院しましたが、医療保険で高額医療費制度が適用されても、驚くほど金額が適用され、医療保険金では、すべてはカバーできませんでしたが、それでも気は楽でした。
なお、医療費控除を計算する際は、保険金は差し引かなければなりませんので、ご注意ください。(医療費を支払ったとき(医療費控除)国税庁のWebサイトに移動します)
“お守り代わり”と思えば、納得感のある支出となるはずです。