8章:長期投資の光と影
週末の昼下がり、頼朋の家は穏やかな静けさに包まれていた。大きな窓から射し込む柔らかな光がリビングを照らし、テーブルの上にはコーヒーカップが並ぶ。その傍らでは、頼朋と真紗子がノートパソコンを開き、投資信託の評価額を確認していた。
「だいぶ回復してきたわね。」真紗子が画面を見ながら微笑む。「2年前はマイナスばかりで、ちょっと怖かったけど、続けてよかったかも。」
頼朋も頷きながら、冷静な口調で言う。
「あの時は、俺も投資をやめようかと思った。でも、長期で続けることが大事だって静香が言ってたことを思い出したんだ。」
暴落の記憶とその教訓
彼らが投資を始めて間もない頃、世界の株式市場は一時的な暴落に見舞われた。経済ニュースでは「急激な金利上昇」「米中対立の激化」といった悲観的な見出しが並び、連日、世界中の投資家が株を手放す動きが報じられていた。
「なんでこんなに下がるんだ!」と、あの時の頼朋は怒りと不安を隠せなかった。画面いっぱいに表示された真っ赤な数字は、まるで家計の未来が切り取られるような感覚を彼に与えた。
しかし、ファイナンシャルプランナーの静香からもらったアドバイスを思い出す。「市場が不安定なのは一時的なことが多い。むしろ下がった時に積み立てを続ければ、将来の回復期に大きなリターンを得られる可能性がある。」
その言葉を信じ、彼らは積み立てを止めずに続けた。そして今、評価額は当時を超え、元本以上の利益を出している。

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長期投資と分散投資の力
「長期投資って、本当に時間が味方になるのね。」
真紗子は感慨深げに呟いた。
頼朋はその言葉に応えながら、「長期で投資を続けると、短期的な価格変動に惑わされなくなる。それに、時間が経つほどリスクが分散されて安定するって言うよな。」
たとえば、ある1年だけを切り取れば、大きな損失が出る可能性もある。しかし、10年、20年というスパンで見れば、市場全体は成長する傾向にある。その間に配当金や市場の回復が利益を押し上げ、損失のリスクを軽減していく。
「分散投資も、かなり効果があったわよね。」
真紗子は手元のメモを見ながら言う。彼女が選んだ「オールカントリー」の投資信託は、世界中の株式に分散して投資している。アメリカ、ヨーロッパ、新興国……一つの地域や業界に偏ることなく、広い範囲にリスクを分散させることができる商品だ。
「確かに、アメリカの株が調子悪い時でも、新興国の株が上がってバランスを取ってくれることがあるよな。」頼朋も同意した。「一つの国や業界に全額突っ込んでたら、暴落の時に一気に持っていかれるかもしれない。」
「だから、オールカントリーを選んでよかったのね。」真紗子はほっとしたように微笑む。
未来に向けた思い
そんな彼らを尻目に、娘の大媛はリビングでダンスの練習をしていた。中学校でダンス部に所属する彼女は、文化祭で披露するパフォーマンスに向けて、毎日練習に励んでいる。「パパ、ママ、今度の文化祭、絶対見に来てね!」と明るく言う大媛の笑顔に、頼朋と真紗子も思わず頷く。
「中学校の授業も結構大変みたいだけど、よく頑張ってるわね。」と真紗子が言うと、頼朋も「成長してるよな。教育費も増えるけど、投資を続けてきたおかげで余裕ができたのは助かるな。」と実感を込めて返す。
夜、ソファに腰掛けながら、真紗子が静かに言った。「最初は不安だったけど、投資を通じてお金を管理する意識が変わったわ。暴落も経験して、やっぱり続けていくことが大事なのね。
頼朋も頷き、「そうだな。これからも長期で、分散を意識して続けていこう。老後の資金もだけど、大媛の教育費や、もっと先の家族のためにさ。」と未来を見据えていた。
翌朝、大媛が学校に向かうために出かける際、「パパとママが頑張ってるなら、私ももっと頑張る!」と元気に笑顔を見せた。その言葉に、頼朋と真紗子は改めて家族としての絆を感じ、力強い気持ちになった。
──長期投資の光と影を経験しながら、家族は未来に向けて一歩ずつ前進する。

投資では、分散投資と長期投資は大事だよね。このお話は解説編。もとのお話をしりたい場合は、「おとな世代のための賢い投資スタートガイド #8」を読んでね。